SPIRAL LIFE

表紙と裏表紙です。→




 「風の旅人』第25号、”SPIRAL LIFE”ができあがりました。早いところでは、明日あたりから書店に並ぶと思います。

今回から表紙の制作を大竹伸朗さんに依頼しましたので、これまでのモノクロ写真の表紙とは随分イメージが異なります。

 統一テーマも、創刊号から15号までの「森羅万象と人間」、16号から24号までの「世界」と「人間」のあいだ、に変わり、「われらの時代」となります。

 今号の巻頭特集において、一家族の6代にわたる歴史を写真によって構成しました。一人一人の人生の二度と繰り返されない厳粛な一瞬と、変化の軌跡と、それぞれの人間関係を写真を通して眺めていると、言うに言われぬ気持ちになります。

 一つの世代が生と死を一巡し、次の世代が前の世代の残したものを引き継ぎながら新しい一巡を始めますが、同じ場所からではなく、少し位相の異なるところからに始まる。人間の生命は、そのようにスパイラル展開をしていることが感じられます。

 一人一人の人間は、個人の意志や意識や願望を超えて前世代から何ものかを受け取り、その上に、その人ならではのものを積み重ねていく。時間の経過とともに様々な経験を取り込んで自分自身を変化させながら、次なる人間に何ものかを受け渡していく。

 「人類史」という抽象的概念ではなく、「家族」という一人一人の顔と息づかいがわかるリアルな実態の流れを見ることで、そのことが、より強く実感できるのではないかと考えました。

 また、人間は、「個」として生きながら、家族や社会という共同体に属しています。無数の人の人間が集まった社会は、それまでの人間が脈々と受け継いできたものを総合的に活用し、一人の人間では及びもしないものをつくり出します。とりわけ現代社会は、驚くべき速度で人間がつくり出したものが統合され、個人の歩みと、社会全体の歩みのあいだに、目も眩むような断絶が生じています。

 しかし、人間は、いつの時代でも、個人と共同体の両極に引き裂かれる葛藤と軋轢に喘ぎながら、少しずつ自分を変えて対応し、自分の周辺に関係の糸を張り巡らし、自分なりの環を生きてきました。一人の人生は永遠に連なる鎖のなかの一つの環にすぎないけれど、その環は個人のなかで閉じて完結しているのではなく、大きな全体につながっている。そうしたことを、誌面を通じて少しでも感じていただければ幸いです。


*また、この第25号の発売に合わせて、広尾のエモンフォトギャラリーで、写真展を開催します。

 詳しい内容はこちらまで

 →http://www.emoninc.com/test/exhibition/spiral.html


◎「風の旅人」のオンラインショップを開設しました。「ユーラシアの風景」(日野啓三著)も購入可能です。

http://kazetabi.shop-pro.jp/