枇杷酒をつくる。

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  庭に枇杷がたくさん実ったので、カラスに食い散らかされる前に収穫をした。スーパーに行くと、庭で採れるものと同じくらいの大きさで一つ80円もする。去年、人からいただいた特大の枇杷は、12個入りで、4000円ほどだ。形が綺麗で傷一つなかったが、庭で採れたものより水っぽくて、甘みがなかった。
 昔は、枇杷なんてどこにでもあって、今のように高級品でなかった。屋根に登って庭の枇杷を収穫しながら、こんなに高級品になってしまった理由を自分なりに考えた。
 はっきり言って、枇杷は育てるのは難しくない。かってに育ち、かってに実をつけている。生命力が盛んで、真冬でも緑濃く葉っぱを茂らしていて、成長がとても早い。力強く伸びた枝が家を傷めつけるので、ほとんど毎年のように枝を切り落としている。ちなみに、枇杷でつくる木刀は、強く柔軟で、木刀のなかで最も高級品だ。
 そして、大きく育った木にたくさんの実をつけるのだが、高い所にあるので手が届かない。しかも、美味しそうに実ったものは、大きな葉で日光が遮られない場所、つまり木の最上部にある。木に登っても採れないのだ。私の場合は、家のすぐ傍に木が生えているので、屋根に登って採れるけれど、それでも、全体のごく一部しか手が届かない。
 私が茫然と見つめる木の上にオレンジ色の実がキラキラと光っているので、カラスがそれをみつけ、大騒ぎで飛んできて、食い散らかしていく。
 しかも、枇杷の実は、少しでもぶつかったり傷つけたりすると、すぐに変色する。農家の人はさぞ取り扱いが大変だろうと思う。現代の消費者は、形が悪かったり、少しでも変色していたら買ってくれないのだから。
 採るのも大変だし,取り扱いも大変だから、枇杷は高級品になってしまったのではないだろうか。
 今でも東京都内を歩いていると、あちこちに枇杷の実が成っている。おそらく、それらを掴みとって食べても十分に美味しいだろう。百貨店の姿形の立派なものよりも、甘いかもしれない。形が悪かろうが、多少、色がくすんでいようが、関係ないと思うのだけど。
 私は、手の届く範囲のものしか採れなかったけれど、それでも莫大な量になったので、信濃屋に行ってウォッカとジンとカルバドスとラムを買ってきて、枇杷をつけこんだ。一週間ほど前、バーで飲んだ時、ウォッカにつけこんだ枇杷が置いてあって、さっそく真似しようと思ったのだ。
 バーテンダーの話しでは、梅酒のように待つ必要はなく、すぐにでも飲めるらしい。