第1221回 横のつながりだけでなく、時間を超えたつながり

 3月26日(土)第2回映像&トーク「Sacred world 日本の古層」開催いたします。

第二回映像&トーク「Sacred world 日本の古層」BY 佐伯剛(風の旅人 編集長) - Kyoto

 日本の観光名所の案内ではなく、日本の歴史の深層を想像力で旅する時間です。

 ヨーロッパを旅行する時は、歴史文化に触れることが大きな目的になりますが、その歴史は中世以降のものが大半で、1000年以上前となると、よくわかりません。

 中国やエジプトやローマやギリシャでは、もっと古い歴史建造物を見ることができますが、現代とのつながりを見出すことが難しくなります。

 それに比べて日本の歴史との関係は、独特です。日々の生活や街の中で歴史を感じることは、ほとんどありませんが、日本中どこにもある神社は、1000年以上前からの神様を祀っていて、人々は当たり前にお参りをします。

 また1800年くらい前からの古墳が、日本には160,000基も残り、人々が住んでいる地域に溶け込むように存在し続けており、その大半は、未調査で、その中はまるでタイムカプセルです。

 そのように、日本人は歴史と隣り合わせに生きていながら、その歴史が複雑すぎることもあって、その意味するところがよくわからず、いまだに謎のことばかりです。

 しかし、謎だと認識できるのは、記録や物など歴史の足跡が膨大に残っているからこそです。それらがいったい何を意味し、どういう関係であり、なぜそこにあるのか?

 そんなこと現代の我々の暮らしに何の関係があるのか?と、自分の人生に忙しい人は言うでしょう。

 しかし、ならば自分の人生っていったい何なのか?という大きな問いが、残ります。

 もし、自分の人生が、自分が生まれてから死ぬまでのあいだの限られた時間で、楽しいとかそうでないとか、悲しいとか嬉しいとか、楽だとか不便だとか、豊かだとか貧しいとかの分別に左右されるばかりで終わってしまうのは、なんだか虚しい。

 虚しいと感じる人が増えているから、人々とつながりたいと感じる人も増えているのだけれど、そのつながりは、同時代の横のつながりばかりが意識されている。同時代の横のつながりというのは、時とともに終わることが前提です。

 横のつながりだけでなく縦のつながり、すなわち時間を超えたつながりが人間界には存在しており、古代の人は、その大切さを理解していた。もしかしたら、現代人より古代人の方が、哲学的な深さがあったかもしれない。つまり、昔の人の方が、永遠というものに対する思いが強かった。

 現代社会は、消費社会であり、「永遠」という言葉なども、説得力もなければ重みもない、商品パッケージのラベルのような扱いになっています。

 創作活動に携わっている人でさえ、口に出すのも恥ずかしいものになっており、アートの価値も、新しい問題提起、新しい暮らしの演出、新しいスタイル、という基準で計られている。

 しかし、変わり続けているようで、けっきょく何も変わっていないということを、私たちは、うすうす感じている。

 そんな時、突然、1000年以上も前のことが、とても身近に感じられたりします。

 人間の思いというのは、1000年経とうが2000年経とうが、そんなに変わらないのだということに、今更ながら気づくことがある。そして、その気づきは、悠久の時が横たわっているゆえに、途方もなく壮大なイメージと一体化しています。

*イベントの詳細と、お申し込みは、こちらから。

kyoto.impacthub.net

 

Sacred world 日本の古層をめぐる旅

www.kazetabi.jp