芸術

第1001回 「室礼展」に見る、緩く心地よいつながり。中央集権的な構造から分散処理的な構造へ。

京都ではKyoto Graphieという写真祭りで盛り上がっています。私も、この期間中、「The Terminal Kyoto」というところで、最近、ピンホールカメラで撮り続けている古樹の写真を、和紙に出力して展示させていただいています。 Kyoto Graphieが写真メインの展示…

第1000回 自分のモラルから言葉や表現物を発するということ

小栗康平監督のDVDブックのFOUJITA (小栗康平コレクション 別巻) <駒草出版>が発表された。 https://px.a8.net/svt/ejp?a8mat=25VR46+1RPEIA+249K+BWGDT&a8ejpredirect=https%3A%2F%2Fwww.amazon.co.jp%2Fdp%2F490544778X%2F%3Ftag%3Da8-affi-145793-22 装…

第998回 もののあはれと幽玄

第7回 風天塾開催 もののあはれと幽玄〜近代合理主義を超えて〜「源氏物語と日本文化の秘めた力」 お申し込みはこちら➡︎https://www.kazetabi.jp/%E3%82%A4%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%88/ (和蝋燭の灯りに照らされた空間で) 日時 2017年4月28日(金…

第992回 1000年前よりも遥か以前と現代の紐帯になる源氏物語

私は源氏物語の研究者でもなんでもないが、なぜかその私が、同志社大学で源氏物語関係のイベントを企画しているので、最近、これまでよりも源氏物語を身近に引きつけて考える癖がついている。 1,000年前に書かれた源氏物語は、欧米世界では近代小説の傑作と…

第991回 根源と全体を受容すること②

小栗さんと京都の清水あたりを歩いている時、小栗さんがデビュー映画「泥の河」を作ってまもなく、若狭と東大寺のお水送りとお水取りのリポーターをやった時の話をされた。 この時のことは、1987年に発行された「哀切と痛切」という本の中に書かれている…

第990回  根源と全体を受容すること①

20歳の頃、2年間の諸国放浪の前後、計り知れない影響を受けた人物が二人いた。一人は小説家、もう一人は映画監督。 世界に対する視点、世界への向き合い方、掘り下げ方は、この二人の作品世界に触れたことで、かなり方向付けられた。それまで試行錯誤しな…

第983回 ユーリー・ノルシュテインの世界は、静かな慈悲の泉

2月3日まで京都シネマで上映中の「アニメーションの神様、その美しき世界」。 http://www.imagica-bs.com/norshteyn/ ユーリー・ノルシュテイン監督の作品は、数年ごとに見てはいるものの、何度見ても、胸に突き刺さるものがある。今回は、デジタルリマス…

第982回  物づくりと、永遠に通じる道。

「草木は人間と同じく自然により創り出された生き物である。染料になる草木は自分の生命を人間のために捧げ、色彩となって人間を悪霊より守ってくれるのであるから、愛をもって取扱うのは勿論のこと、感謝と木霊(こだま)への祈りをもって、染の業に専心する…

第963回 若冲に還る。(後半)

(前半から続く)若冲は、次のような言葉を残している。 今の所謂画は、皆画を画く者にして、未だ能く物を画く者を見ず。且つ技を以って售(う)らんことを求め、未だ能く技より進(まさ)る者有らず。是れ吾の人に畸とする所なり。(もと漢文、訓み下し) …

第962回 若冲に還る。(前半)

若冲は、「千載具眼の徒をまつ」という言葉を残した。 やはり若冲はすごい。東京都美術館で行われた「若冲 生誕三百年」の展覧会は、待ち時間5時間という凄まじい人気だったようだが、10月30日に行った京都市立美術館の展覧会は、「動植綵絵」など人気作品…

第961回 無意識の記憶と、人の幸福

久しぶりに高野山を訪れた。高野山では、陶芸家の三星善業さんの窯出しのタイミングと重なり、また三星さんの弟子の和田直樹君が、ちょうど窯焼きの最中で、幸運だった。http://hiraharagama.doorblog.jp/ 和田君は、この前に訪れた時とは違う窯で焼いていた…

第960回 もののあはれを知る二つの東京 (第4回・完)

(第3回から続く) 時は不可逆であり、過ぎたことを悔やんでもどうにもならない。 それが、ものの限界である。しかし、ものの限界を知る時に初めて、ものの価値をリアルに感じられることもある。 ”限りあるもの”との出逢いは偶然であり、二度と同じ形での出…

第959回 もののあはれを知る二つの東京(第3回)

(第2回から続く) 技術革新がどれだけ進もうとも、基本的に、人間と”もの”との関係は昔からそんなに変わっていない。変わっているのは主に観念の部分であり、身体という限りある”もの”とともに在る人間は、これまでも、そしてこれからも、”もの”との関係を…

第958回 ”もののあはれ”を知る二つの東京(第2回)

(第1回から続く) 今年度、「東京」の名がつく二つの大型写真集が刊行された。 一つは、鬼海弘雄さんの「Tokyo View〜東京模様〜」(発行:かぜたび舎)、そしてもう一つが、有元伸也さんの「Tokyo Circulation」(発行:禅フォトギャラリー)だ。 この二…

第957回 「もののあはれ」を知る二つの東京 第1回

この20年ほどの間に、パソコンが大型コンピューターに取って変わり、さらに、どこにでも持ち出し可能なラップトップコンピューター、より携帯性に優れたスマホが人々のあいだに普及した。これから急速に進むのは、IoT(Internet of Things)、「もののインター…

第956回  主義主張の正しさよりも、伝え方の正しさ。

「アルビノの木」という映画が、7月16日から29日まで、テアトル新宿のレイトショーで、緊急に、限定に、公開される。 http://www.albinonoki.com/ 金子雅和監督(38歳)の自主制作作品である。昨今、映画産業の衰退は著しい。テレビ局や広告代理店がしきる…

第920回 小栗康平さんの新作映画と、かたじけなさ

写真/松井康一郎 10月1日発行まであと僅かとなった風の旅人 復刊第6号(第50号)のロングインタビューは、映画監督の小栗康平さん。今回は10ページにわたる大特集。11月14日より、小栗監督の10年ぶりになる新作映画『FOUJITA』が、全国ロード…

第906回 陰陽分かれざりし時

風の旅人ともつながりの深い大橋弘さんの写真が、現在、新宿の伊勢丹のショーウインドウを飾っています。 これはちょっと驚きでした。ついに時代が大橋さんに追いついてきたかという感じです。 きっかけは、私が、吉祥寺の「食堂ヒトト」のオーナーである奥…

日本人の魂の故郷 室生寺と土門拳

(撮影/土門拳) 女人高野と呼ばれる室生寺に行ってきた。土門拳が何度も通い続けた室生寺は一度は行ってみたかった。 到着したのが夕暮れ時の閉館前で、紅葉の季節なのに観光客の姿がなく、静けさに包まれていて心穏やかな気持ちになった。 空海は、身体は…

森永純さんの写真の命

写真集「WAVE〜All things change」より 森永純さんの写真集「WAVE〜All things change」が出来上がり、ようやく納品することができた。 3年か4年前の初夏だったと思うけれど、森永さんの「ドブ河」の写真に衝撃を受けていた田口ランディさんが、森永さん…

即興とは何か? 原始感覚とは何か?

今年も、長野県の信濃大町郊外の木崎湖で行なわれた原始感覚美術祭に参加してきた。 この美術祭の特長は、美術制作者達が、この湖の畔に寝泊まりしながら、この地の空気を吸い、水を飲み、この地で食べ、眠り、星空を眺め、集い、語らい、そうして自分の中に…

今、学ぶべきことは何か?

8月30日(土)、京都で第二回の風天塾を開催する。http://www.kazetabi.jp/%E3%82%A4%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%88/テーマは、学びとは何か? 〜カオスと科学、芸術〜 学びとは何か?というお題になっているが、自分の本音としては、「今、学ぶべきことは…

第2回 風天塾開催 学びとは何か?〜カオスと科学、芸術〜

日時: 2014年8月30日(土) 開場:午後5時〜 開演:午後5時30分〜午後8時30分*今回は、第1回に比べて、後ろの時間に余裕がありますので、懇親会形式で、延長線を行なう予定です。場所: IMPACT HUB KYOTO(虚白院) 〒602-0898 京都市上京区…

「すべては発動し、すべては循環する。」森永純さんの新作写真集

(森永純 WAVE〜All things change) 今後、年に一冊ずつ写真集を制作していきたい。 世の中には、簡易な作りの写真集が数多く発行されているが、一生の間、手元に置き、じっくりと何度も見る価値のある写真集を作る必要があると私は考えている。 20世紀は、…

進化とは何か!??

高野山で陶芸活動を続ける友人から、高野山で志村ふくみさんの草木染めの実習と講演があると聞いて出かけた。 草木染めの実習では、高野まき、樅、杉、うわみず桜、キハダなど高野山に生育する植物が使われて、美しい色が生み出されていたが、同じ植物を京都…

表現は、認識に働きかける栄養分

「価値観が違う」という言い方がよくされるけれど、価値観ではなく、「認識が違う」という言い方をした方がわかりやすい。 価値観という言い方をすると、同質のもののあいだの比較というふうに聞こえてしまう。認識の違いならば、そこに質(幅とか深さ)が関…

世界を見る眼を変え、意識を変える写真の力

私が日本で最も尊敬している写真家の一人である鬼海弘雄さんと話していると、「写真が撮れない」という言葉がよく出てくる。 「写真なんてシャッターを押せば写るのだから、写真が撮れないという意味がよくわからない」という人もいるだろう。 写真が撮れな…

消費社会と写真

(撮影:木村肇 風の旅人 復刊第4号 「死の力」より) ポートフォリオレビューで自分の写真を見せに来て、わざわざ、「他人の影響を受けたくないので、人の写真はあまり見ないようにしています」と言う人がいる。文章表現を志している人で、こういう発言を…

狐につままれたような、懐かしく豊かな話。

石牟礼さんのインタビューのテープを書き起しながら、思いもかけず、話がきちんと成立しているので、少し驚いている。石牟礼さんは、高齢のうえ、重度のパーキンソン病で、身体をしっかり保つことも、言葉を発することも、非常な困難を抱えておられる。それ…

希望とか救いとか赦しとか•••

これから熊本に飛ぶ。石牟礼道子さんのお話を伺うために。 石牟礼さんは、ずっと長いあいだ、重い病気にかかられている。現在も、病院に入院中である。そういう石牟礼さんに、会って話をしたい。 現在、制作中の、風の旅人の第48号のテーマ「死の力」に、…