宗教

第1207回 富士山という須弥山の周りの生命の曼荼羅世界。

2月20日頃の予定だった「The Creation 生命の曼荼羅」の写真集が、少し予定が早まって、2月1日には完成します。 www.kazetabi.jp 曼荼羅という言葉を耳にしたことがある人は多いと思う。しかし、極彩色の円の中に無数の仏様が存在していて、その造形と色彩が…

第1204回  事物の向こう側にアクセスする力

このたび制作した大山行男さんの作品集「The Creation 生命の曼荼羅」の中に、以下の文章がある。 「かつて、南アルプスの蝙蝠岳の山中でテントを張り、撮影する日々に明け暮れていた時があった。 陽が傾くと、無音の時が流れ、あたりから光は消え、さらに深…

第1202回 懐かしさに宿る真理

現在、東京の半蔵門ミュージアムで、井津建郎さんの写真展が開かれている。 https://www.hanzomonmuseum.jp/exhibits/special.html この美術館は初めて訪れたのだが、東京の真ん中にこんなに素晴らしい場所があったのかと、正直、驚いた。特別展の展示スペー…

第1198回 エチオピアが、ユーゴやアフガンのようになってしまう。

現在、エチオピアが崩壊の危機にある。 ユーゴスラビアや、アフガニスタンのようになる可能性がある。激しい内戦により、民族間の対立は収まるところを知らず、虐殺、拷問、性的暴力が横行し、この1年間で戦闘により数千人の命が奪われている。 私は海外70…

第1195回 光が備える波動の性質と、時を超える写真術。

石牟礼道子さんの才能を発見し、世に送り出し、支え続けた渡辺京二さんが、「逝きし世の面影」という素晴らしい本を残している。明治維新の頃、日本にやってきた外国人が書き残した日本人の生活の美しさや能力の素晴らしさをまとめたものだ。 日本人が無自覚…

第1174回 日本の祈り、神道について思うこと。

京都 月読神社 日本の宗教について、神道と仏教が基本になっていることは、誰でも知っているが、神道とは何か?と問われた時、アニミズムとか、八百万神(やおよろずのかみ)と簡略化され、縄文に遡る自然崇拝の思想だと説明されることがある。 しかし、神社…

第1162回 ピンホール写真と、祈り。

高性能のデジタルカメラは、撮影者が狙うような絵を作り出すために非常に有用なツールとなっている。 それは、撮影者の満足度を高めるために適しているかもしれないが、そのアウトプットが、自分と世界のあいだの作法として相応しいものかどうかは別問題だ。…

第1110回 現代人にも受け継がれている縄文の世界観や生命観。

山添村 縄文時代早期の遺物が多く出土した大川遺跡の目の前の名張川。 最近、山の中に分け入って、激しく急流が流れるところを訪れることが多いのだが、そういう場所の近くに見晴らしの良い高台があり、そこに縄文人が住んでいたと知ると、縄文の人たちの世…

第1037回 天と地と人間を貫く不可思議な力!?

昨日の夜、突然、若い友人が電話してきた。 彼は、世間では心の病気とされる症状があり、とても感度が高く、繊細なセンサーを持っていて、そのため、現代社会では非常に生きづらい状態で生きている。しかし、幸いなことに、彼は、自分の状況を客観視する眼差…

第1009回 古きを温めて〜日本の風土と魂の行方〜

(小野妹子の古墳 滋賀県 大津市) 現代のことが気にならないわけではないし、子供を持つ親として未来のことも心配だ。 そして、政治や経済が、未来のあり方に大きく関わってくることも理解している。 しかし、それ以上に、今改めて、私たちの足元文を見つめ…

第1008回 禍福と、かんながらの道(続) 〜小野氏や源氏物語と、古今東西変わらない”祓い”のこと〜

(京都市北区 小野岩戸) 平安京は、風水を配慮して都を守るように作られていることはよく知られている。しかし、守り方は、一つではない。平安の都の完成に至るまでに様々な陰謀や無数の死が積み重なっており、恨みを残して死んでいった人々の祟りからも、…

第1007回 禍福と、かんながらの道。

8月5日は、現在の日本で経験できるもっとも美しく静謐な祭りの一つ、今宮神社の織姫祭りだった。ありがたいことに、私もこの祭りの実行委員会の末席に座らせていただいている。 神事の後には、神前で、お供え物を参列者で味わう豊かなひととき。かけがえの…

第1004回 世界でいちばん美しい村

(撮影:石川梵) 石川梵監督の「世界でいちばん美しい村」というドキュメント映画がある。日本全国で上映され、人々の心を捉えているが、6月17日から、大阪の第七藝術劇場でも公開される。 http://www.nanagei.com/ 6月19日には、13時55分からの…

第977回 競争から共創へ、利己から利他へ⑦ 日本の歴史や伝統!?

山頂に巨石が祀られている六甲の比売神社を訪れた。最近、神社を頻繁に訪れているが、神社の建物そのものより、その場所に長い年月を超えて存在し続けている大木や巨石に心惹かれる。 原生林の中の巨木も素晴らしいが、人間の傍で人間の営みの影響を受けなが…

第975回 競争から共創へ、利己から利他へ⑤ 人間と自然をつなぐ宗教

伊勢に行った。冬至の前後、太陽は、伊勢神宮の内宮の宇治橋にある大鳥居から昇るというので、それを見るために。 夏至の時は、夫婦岩の間から昇り、その延長線上に、富士山と鹿島神宮があり、その逆方向は、高野山から剣山を通り、高千穂に至る。日本を南北…

第971回  競争から共創へ、利己から利他へ①  宗教の本質

神社が政治的存在感を増している。 http://toyokeizai.net/articles/-/139081 神社で憲法改正を求める幟やポスターが掲げられ、署名が集められている。神社は、祈りの場なのに政治活動の場になっている。 そうした神社の関係者は、「個人だけでなく国家の安…

第910回 大神島から見る日本

宮古島から大神島へと旅をしてきた。 話には聞いていたが、宮古島周辺の浜辺や海の美しさは感動的だった。小笠原は行ったことがないが、これまで訪れた日本の島々の中で最も美しかった。タヒチのボラボラ島やバリ島、ニューカレドニアやバヌアツやコモド島や…

第904回 不易流行(続き)

「何事のおわしますをば知らねども かたじけなさに涙こぼるる」(西行) 伊勢神宮は変化を拒んでいない。持統天皇4年(690年)より1300年もの長きにわたり、20年ごとに建て替えられて、その姿を一新する。 伊勢神宮を造る木に防腐剤など使用してい…

第891回 祈りが織り込むいのちの模様

私は、これまで出版社に務めたことがないので、他の雑誌がどういうふうに作られているか詳しくは知らない。 編集長と複数の編集者で作るのであれば、目的を共有するための設計図が必要だろう。最初に企画会議をして企画をたて、役割分担をして、それぞれが企…

第890回 「こんな大それたこと」

(左・白川静さん 右・梅原猛さん) 今朝の京都新聞の第1面、連載コラムの『天眼』には驚いた。梅原猛さんが寄稿しているのだが、最初から最後まで自分の自慢話ばかり。賞の受賞の自慢とか、権威団体の長だった自慢、あげくのはてに勲章まで。よくもまあこ…

第889回 永遠!?

見つかったぞ何が? 永遠が太陽と融合した海が (『永遠』アルチュール・ランボー) イエメンでは、モスクでの自爆テロで多数の民間人が亡くなり、チュニジアでは、武装集団がバルドー博物館を襲撃し、観光客を無差別に殺害した。 チュニジアは、大学を中退…

第886回 居場所(一昨日の続き)

一昨日、『居場所」という内容でブログに記事を書いたところ、読者のAさんから以下の内容のメールをいただいた。 この方は、2011年3月11日の東北大震災の後、故郷を離れ他の地域に移住している。その移住先で高校一年生の娘さんが、入学して間もない6…

偶像化とは、物事を一緒くたにして、本質を見誤ること。

「表現の自由か冒涜か」という議論がある。自由の為に他者を冒涜してもいいのかどうかという議論だ。しかし、そういう議論に覆われてしまうと、あの風刺画が、その内容を吟味することなく「表現の自由」のイコンになってしまい、殺害された人達が、表現の自…

”モノノケ”と”色好み”の哲学

昨日、京都の下京区にある名勝 渉成園で源氏物語に関する催しが行なわれた。素晴らしい庭園を背景に、千年の時空を超えて魂を遊ばせながら、近代社会の様々な問題を乗りこえるための哲学が、最新の社会学や西欧からの輸入思想ではなく、この日本の根元にある…

即興とは何か? 原始感覚とは何か?

今年も、長野県の信濃大町郊外の木崎湖で行なわれた原始感覚美術祭に参加してきた。 この美術祭の特長は、美術制作者達が、この湖の畔に寝泊まりしながら、この地の空気を吸い、水を飲み、この地で食べ、眠り、星空を眺め、集い、語らい、そうして自分の中に…

進化とは何か!??

高野山で陶芸活動を続ける友人から、高野山で志村ふくみさんの草木染めの実習と講演があると聞いて出かけた。 草木染めの実習では、高野まき、樅、杉、うわみず桜、キハダなど高野山に生育する植物が使われて、美しい色が生み出されていたが、同じ植物を京都…

国東半島で思い至った、写真の罪と贖い

2月1日、国東半島で行なわれた修正鬼会の祭りを見て来た。国東の地には、神と仏が複雑に絡み合う独特の宗教文化が今も色濃く残っている。岩盤に掘られた磨崖仏や、今から1300年程前の美しい仏像も数多く残っており、京都や奈良と同じように日本の仏教…