2022-01-01から1年間の記事一覧

第1228回 パンデミックの後にくるもの

松尾大社のそばの桂川の河岸では、バーベキューをする若者たちが群れている。 さすがに自粛生活も2年になると、我慢の限界であり、人との接触は増える。そのため新型コロナの感染者数が減らず、専門家が、また警鐘を鳴らしている。 新型コロナについて語る時…

第1227回 奈良時代のパンデミックと、衆生救済の思想

宝山寺の背後の岩壁にある般若窟は、捕らえた前鬼・後鬼を閉じ込めて改心させた場所だという。 生駒山は、修験の祖、役小角ゆかりの地。7世紀の中ごろ、山中に鬼が住み良民を苦しめていた。これを役小角(えんのおづぬ)が捕らえて改心させ、その後は、役小角…

第1226回 古代、海人の拠点だった京都

月読神の旧鎮座地から愛宕山を望む 京都の松尾大社駅から桂川沿いを上流に向かうと観光客で溢れる嵐山だが、松尾大社から下流に500mくらい歩くだけで、京都でもっとも風光明媚な場所に至る。桂川が大きく蛇行するポイントで川幅が広く、空の広がりも素晴…

第1225回 思考特性と、時代との関係

日本は、この20年か30年、経済的に止まっているとよく言われる。経済だけでなく、学問においてもそう感じる。その原因は色々あるだろうが、根っこの部分に思考方法の問題が横たわっているのではないだろうか。 学問の場でも、ビジネスの場でも、かなり前から…

第1224回 ウクライナとユーゴスラビアの類似

個人的な見解にすぎないけれど、ウクライナというのは、かつてバルカンに存在していたユーゴスラビアという国の状況に、非常に似ているのではないかと思う。 広大な領土の中に、宗教も言語も民族も異なる人々が暮らし、さらに、東側と西側の価値観の違う世界…

第1223回 ウクライナのことと、政治家の白痴化に対する不安。

ウクライナとロシアの戦争について、歴史文化も国の置かれている状況も異なる日本に安住している自分が、何かの考えを持ったところで、それは浅いものにしかならないという自覚があった。 今もその感覚は変わらないが、昨日、ウクライナのゼレンスキー大統領…

第1222回 学校で教えてくれない歴史の核心

京都を訪れる人は、下鴨神社や上賀茂神社を訪れることが多いと思うけれど、そこに祀られている神様のことが、よくわかりません。 下鴨神社の賀茂建角身命とか、上賀茂神社の賀茂別雷尊とか、覚えにくい神様の名前で、正直言って、なんだかよくわからない。け…

第1221回 横のつながりだけでなく、時間を超えたつながり

3月26日(土)第2回映像&トーク「Sacred world 日本の古層」開催いたします。 第二回映像&トーク「Sacred world 日本の古層」BY 佐伯剛(風の旅人 編集長) - Kyoto 日本の観光名所の案内ではなく、日本の歴史の深層を想像力で旅する時間です。 ヨーロッパ…

第1220回 卑弥呼の時代と第26代継体天皇のつながり

西山塚古墳 飛鳥の牽牛子塚古墳を訪れた後、天理にある第26代継体天皇の皇后、手白香皇后の西山塚古墳を訪れた。 しかし、宮内庁は、すぐ近くにある全長230mの巨大な西殿塚古墳を手白香皇后の古墳だとし、陵墓の静安と尊厳の保持のため管理の対象としている…

第1219回 謎が謎を呼ぶ古代世界

牽牛子塚古墳 飛鳥時代の女帝・斉明天皇と、娘の間人皇女の陵とされる牽牛子塚古墳。2018年1月からかつての姿を蘇らせるために工事が行われていたが、ついに完成し、3月6日から一般公開されたので、さっそく訪れてきた。 この古墳は全国に14基ほどしか発見さ…

第1218回 われわれは、どこから来て、どこへ行くのか? 第一回 京都に秘められた古代の記憶

「日本人とは何か? われわれは、どこから来て、どこへ行くのか? 日本の聖域に秘められた古代の記憶を探る」 2022年2月27日 第一回開催 「京都に秘められた古代の記憶」において、参加者に事前に送らせていただいた長いメモを添付します。 古代のことを語る…

第1217回 「土偶を読む」を絶賛する人たちの心理って?

縄文時代のことが気になっている一人として、「土偶を読む」という本がベストセラーになっていると知って立ち読みしたが、あまりにも独断的で、答えを最初に決めてから、それにそった裏付けだけを集めているという姿勢が目に余ったので、どうでもいいと思っ…

第1216回 危険と背中合わせだった諏訪の御柱祭さえ歪めるコロナパニック。

ショックな出来事。 4月上旬に行われる予定の諏訪の御柱祭。 申年と寅年に行われる奇祭、1200年も続いてきた伝統の祭りが、コロナ禍の影響によって、山出しの曳行(えいこう)や木落としが行われないのだという。 https://www.shinmai.co.jp/news/article/CN…

第1215回 歴史を再認識する必要性

私は、20歳の頃から世界の70カ国以上を訪れ、特に重要な古代遺跡とされるものは、そのほとんどを訪れてきました。子供の頃から、「謎の古代文明」に強く関心があったからです。 古代文明の地を実際に訪れると、人類の歴史は、階段を登るようにステップアッ…

第1214回 日本の古層をめぐる旅 イベント開催 第1回「京都に秘められた古代の記憶」 

2016年から日本の古層を探求し続けて、これまで2冊の本を発行してきましたが、このたび、IMPACT HUB京都において、映像&トークを行うことにいたしました。 全体を通したテーマは、「日本人とは何か? われわれは、どこから来て、どこへ行くのか? 日本の聖…

第1213回 現代もまた銀河鉄道の旅の途中

(小池博史ブリッジプロジェクトのInstagramから) 昨日、小池博史ブリッジプロジェクトの「Milky Way Train」を観てきた。 宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を基点にした小池さんのオリジナル世界。 小池さんの舞台を観に行く人で、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を…

第1212回 伊豆と鹿島と九州における海人や縄文時代とのつながり。

(熱海 来宮神社) 一昨日のエントリーで伊豆の来宮(キノミヤ)神社と海人と縄文時代の関係について書き、さらにキノミヤ信仰が鹿島踊りと関わりが深いと述べたが、「鹿島」は、茨城の鹿島だけでなく、海人と関わりの深いところに地名が残っている。 たとえ…

第1211回 伊豆のキノミヤ信仰と、海人や縄文時代とのつながり。

(熱海 来宮神社の樹齢2000年を超えるとされる楠木) 熱海の来宮神社は、日本屈指のパワースポットなどと言われ、毎日、多くの参拝者が訪れている。本殿の左奥にあるご神木の大楠の巨樹は、樹齢2000年を超えると言われるが、樹齢1300年とされるもう一本の楠…

第1210回 出版不況のなか、あえて写真集を作るなら。

このたび制作した大山行男さんの写真集「The Creation 生命の曼荼羅」。 www.kazetabi.jp 発送作業も一段落し、届いた方から、メッセージをいただいています。幸いなことに、今のところ、不満の声は届いていません。 私は、これまで同じ印刷方法で、自分の「…

第1209回 義務教育の教科書や大河ドラマでは伝わらない歴史背景

新しく始まった大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。できるだけ史実に寄り添って、それ以外は自由に、という発想で作られているということなので、ウケ狙いの演出が目にあまるが、史実に寄り添ってという方針に期待して、これまで見てきた。 昨日は、源頼朝の挙兵と…

第1208回 歪んだ人間の死生観と親子愛

92歳という高齢で寝たきりの母が亡くなり、そのことを逆恨みした66歳の息子が、医師をはじめとする在宅医療・介護に関わった人たちを自宅に呼びつけ、44歳の医師を散弾銃で殺害し、41歳の理学療法士に重症を負わせた痛ましすぎる事件。 44歳の医師と41歳の理…

第1207回 富士山という須弥山の周りの生命の曼荼羅世界。

2月20日頃の予定だった「The Creation 生命の曼荼羅」の写真集が、少し予定が早まって、2月1日には完成します。 www.kazetabi.jp 曼荼羅という言葉を耳にしたことがある人は多いと思う。しかし、極彩色の円の中に無数の仏様が存在していて、その造形と色彩が…

第1206回 富士山と伊豆と八ヶ岳を結ぶ女神の不思議なライン。

(西伊豆の烏帽子山の山頂に鎮座する雲見浅間神社からは、駿河湾をはさんで富士山が望める。富士山は、この神社の真北に位置する。この浅間神社の祭神はコノハナサクヤヒメではなく磐長姫。海岸にそびえる烏帽子山の高さは162m。その山頂にたどり着くために…

第1205回 出版業界の構造変化について

数ヶ月前に、講談社がアマゾンと直接取引を行うことを発表し、業界に驚きが走った。これまでにも講談社発行の本をアマゾンで買うことはできていたので、業界関係者でなければ、さほど驚きとはならないニュースだ。 しかし、これまで講談社をはじめ大手出版社…

第1204回  事物の向こう側にアクセスする力

このたび制作した大山行男さんの作品集「The Creation 生命の曼荼羅」の中に、以下の文章がある。 「かつて、南アルプスの蝙蝠岳の山中でテントを張り、撮影する日々に明け暮れていた時があった。 陽が傾くと、無音の時が流れ、あたりから光は消え、さらに深…

第1203回 生命の曼荼羅

富士山の写真で知られている大山行男さんの新しい写真集「The Creation 生命の曼荼羅 vol.1」 。 これから印刷をする前に、先行予約を行い、部数を決定したいと思います。 このたびの写真集は、富士山だけでなく、富士山周辺の生命の万華鏡世界を表したもの…

第1202回 懐かしさに宿る真理

現在、東京の半蔵門ミュージアムで、井津建郎さんの写真展が開かれている。 https://www.hanzomonmuseum.jp/exhibits/special.html この美術館は初めて訪れたのだが、東京の真ん中にこんなに素晴らしい場所があったのかと、正直、驚いた。特別展の展示スペー…