第1203回 生命の曼荼羅

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 富士山の写真で知られている大山行男さんの新しい写真集「The Creation 生命の曼荼羅 vol.1」 。

 これから印刷をする前に、先行予約を行い、部数を決定したいと思います。

 このたびの写真集は、富士山だけでなく、富士山周辺の生命の万華鏡世界を表したもので、富士山麓に30年以上暮らしている大山さんにしか表せない世界です。

  ここ数年、私も富士の麓に通いながら、今回の企画に即して、大山さんが毎日のように撮り続ける写真を見て、さらにどういう写真が必要かなど、何度も対話しながら大山さんと並走してきました。

 A4サイズで120ページ。カラー印刷です。価格は、税込、発送代込みで1500円です。発行日は、2月20日の予定です。

 詳しい内容は、こちらからご覧ください。

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 「The Creation」というのは、写真に詳しい人なら知っているエルンスト・ハースの代表的写真集で、1971年の発行で初版だけで30万部を販売したネイチャーフォトの金字塔と同じタイトルです。

 あえて同じタイトルにしたのは、ハースの「The Creation」が旧約聖書の世界観に基づく天地創造の物語であり、東洋には、それとはまったく異なる天地創造のビジョンがあると考えるからです。

 西欧思想が直線的に階段を上っていくように進化の法則を説くのに対して、東洋思想は、生命環境も円環の世界であり、流転し、異なるものの関わりが生まれ、相反するものも調和し、形あるものはやがて滅し、新たな形へと転生していきます。

 そうした東洋のビジョンを、富士山の周辺の自然の曼荼羅世界で表そうとしたのが、このたびの写真集となります。

 現在は、紙の本でなくても、インターネット上で美しい写真や、興味深い写真をいくらでも見ることができます。なので、どんなものでも紙の本にする必要性はありません。

 しかし、一つのまとまった世界をパッケージにして届けようとすると、やはりインターネットよりも紙の本の方が適しています。

 私は、これまで10,000円の豪華写真集、写真の素晴らしさを最大限に引き出すグラフィック雑誌、単行本のように手元に置いて読んだり見たりできる写真と文章の本など、様々な印刷物を作ってきました。本は、どのように接してもらいたいかという目的に応じて、いろいろ形を変えていけばいいと思います。(その中にインターネット情報も含まれます)。

 出版不況云々という声が多いですが、出版不況になっている理由は構造変化が起きているからであって、その構造変化にそった物作りや販売の仕方をしなければ、変化に対して不満と愚痴しか出てきません。

 古くからの出版社まかせの作り方で、本屋流通という昔の売り方をすることが、出版における権威的な方法になっているので、どうしてもその方法に固執してしまう人が多いのですが、現状はかなり苦しくなっていると思います。

 時代は変わっており、かつてのマスコミュニケーションの時代のように、大量に作ったものを宣伝などを通じて大量に売りさばく時代においては、物流システムと同じ書籍流通方法が適していましたが、果たして今はどうでしょう。

 メディアに登場する経済の専門家は、相変わらず、数や量を景気の良し悪しと結びつけて話をしますが、一方で、地球環境の問題を深刻ぶった顔で話しているという矛盾があります。質よりも量(数)を追求するスタンスが、地球環境を悪化させていることは間違いないのに。

 江戸時代は、成長経済というより循環型経済であり、長く平和で豊かな時代が続いたし、その時代に作られていた物は素晴らしかった。明治初期に日本を訪れた西洋人は桃源郷のような日本の風景を賛美し、手作りの物の芸術性の高さに感嘆した。

 人間社会という存在は、どういう環境になっても、その環境に適応する術を作り上げれば、その中で高度化できることを歴史が証明しています。

 メディアで伝えられる抽象的な全体像に振り回されるのではなく、手で触れることができて実際に目で見ることができる具体的な世界に、より丁寧に接することで、世界観は変わる。

 「The Creation 生命の曼荼羅Vol.1」は、そういう本です。

 

 

ピンホールカメラで撮った日本の聖域と、日本の歴史の考察。

2021年7月5日発行  sacerd world 日本の古層 vol.2   ホームページで販売中

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