歴史

第1325回 鬼伝承の地と、鉱物資源と、交通の要衝。

岐阜県瑞浪市の鬼岩。ここは木曽川支流の可児川の源流に近く、巨岩群の中を、清冽な水が勢いよく流れている。 この地は日本有数のラジウム温泉の場所で、すぐ近くに、日本最大のウラン鉱脈がある。 鬼岩から5kmのところには、高レベル放射性廃棄物の処分の…

第1324回 石垣づくりの奥義と、未来の可能性。

岐阜県中津川の苗木城あたりは、日本三大ペグマタイトの地、つまり宝石の産地。 ペグマタイトは、主に花崗岩地帯に生じるが、中津川は、花崗岩の奇岩がゴロゴロしている。 巨石とか大樹は、古くから信仰の対象だが、神籬(ひもろぎ)など神を迎えるための依…

第1322回  CHAT GPTの先の未来

CHAT GPTを子供に使わせるべきかどうか? とか、大学生が、これを使って論文を書くようになってしまうのではないか、とか、どうでもいいような議論がなされている。 仮に大学生が、CHAT GPTで論文を書いたとしても、問題になってくるのは、それを評価する側…

第1321回 試しながら修正をくわえて最適をめざすこと

スティーブ・ジョブスの日本文化への関心はよく知られており、彼は、来日のたびに、京都の苔寺(西芳寺)を訪れていた。 スティーブ・ジョブスは、次のように言っている。 「カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)をもとに、テクノロジーを構築していくこ…

第1319回 今年の土門拳賞と、写真表現の行く末について

昨日は、船尾修さんの土門拳賞の授賞式で、協賛企業や来賓の人のスピーチの後に、他の人があまり認識していない彼のこれまでの活動の軌跡についてスピーチをするのが私の役割だと船尾さんから言われていて、自分もそのつもりだった。 しかし、選考委員の大石…

第1317回 苦海と浄土がつながるコード

今年に入ってから、現代と古代のコスモロジーというワークショップセミナーを行っており、次の5回目を4月22日(土)と23日(日)で計画している。 https://www.kazetabi.jp/%E9%A2%A8%E5%A4%A9%E5%A1%BE-%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%…

第1314回 酒=避けの神は、現代と未来の境の神でもある。

オオヤマツミ神社(愛媛県今治市) 古代、文字のなかった時代、「トポス」がとても重要だった。 トポスというのは、古代ギリシャ語で「場所」を意味するのだが、足場であり拠点であり、思考を進めるうえでの手掛かり、論点、定石といったものを含む。 つまり…

第1313回 ”酒”の神は、”避け”の神。

(京都 梅宮大社) 前回のエントリーで、酒というのは、厄災や悪霊を防ぐ「避け」であると書いた。 神事において清めに酒が用いられるのも同じ理由であり、日本三大酒神神社のうち、酒神といえるのは、京都の梅宮大社の酒解神(大山津見神)だけであるとも書…

第1308回 自由からの逃走

エーリッヒフロムは、ナチズムに傾倒していったドイツのことを深く考察し、「自由からの逃走」という本を書き上げた。 ドイツ国民は何が原因であのような状況となり、また何に導かれてあのように進んで行ったのか? 一人ひとりは、真面目で、誠実で、決して…

第1307回 古代、東国は、本当に後進地帯だったのか!?

明日の3月4日に行う「現代の古代のコスモロジー」のワークショップセミナー。本日、風邪を引かれた方のキャンセルが出ましたので一名の空きがでました。 今回は、武蔵国(東京とその周辺)を掘り下げます。 一般的な歴史認識だと、日本の歴史は近畿を中心に…

第1305回 いのちを繋ぐ力とは

若い友人に返答するための文章を書いていたら、「コスモロジー」というテーマで、本作りやワークショップを行っている自分の潜在意識が浮かび上がってきた。 「Sacred world」の本作りにおいて、私は、古代史研究をやっているつもりはないし、写真においても…

第1301回 500年を区切りに起きる人類のコスモロジーの転換。

そもそも私は、古代のことについて、どの時代に何が起きたとか、誰がどうした、これこそが真実であるという類の、過ぎたことに対する一つの正しい答だけを求める原理的思考で、古代のフィールドワークを行なっているのではない。 蘇我馬子や藤原不比等の陰謀…

第1300回 古代のコスモロジーと、国譲りの神話との関係

(伊豆下田の伊古奈比咩命神社) 1月31日に東京から京都に移動する時、前から気になっていた岐阜の大垣あたりを探求し、東海と福井と近江から京都や神戸にかけて、古代、深いつながりがあり、そこに前方後方墳が関係しているらしい、ということを、前回と前…

第1299回 古代、東海と福井と近江の関係(2)

余呉湖 昨日、東海から近畿にかけての古い前方後方墳のことを書いた後に連絡をくださった人の在住場所が愛知県の新城市となっていて、ふと気になって、「新城」の位置関係を調べてみた。 というのは、三河の聖山である本宮山の麓の新城は、以前にも訪れてい…

第1298回 古代、東海と福井と近江の関係(1)。

朝7時、うっすらと雪化粧の富士山麓を出発して、高速道路を使わず走り続け、13時間かけ、夜8時に京都に着いた。 高速道路を使わない方が、それぞれの地域の地理上の関係や、地質的な特徴が掴みやすい。 車の運転は、ずっと運転ばかりしていると疲れたり眠…

第1297回 古代海人のコスモロジー

前回の記事で、福島第二原発がある場所の天神原遺跡(2000年前における東日本最大の集団墓)が、遠隔地交易の拠点だったのではないかということを書いた。 そして、この天神原遺跡の位置が、北海道の余市からまっすぐ南に来たところにあり、この東経141度の…

第1296回 日本古代のコスモロジーと、日本の地質。

日本という国の中を移動する時、列車や高速道路を使ってしまうと気づかないが、古くからの街道、とりわけ河川沿いの道を通ると、この国の地質的な特徴がよくわかるし、そうした地質的な特徴が、文献資料や考古学的成果から見えてこない歴史の真相に近づく鍵…

第1292回 大学入試の変化がもたらす未来

2016年度から東京大学が『推薦入学』を導入し、2021年度の全国公私立大学の入学者のうち「推薦入学者」が50%を超えた。 resemom.jp 現在の日本の行き詰まりは、教育から変わらなければどうにもならないと思っていたが、近年、その教育に大きな変化が生まれる…

第1291回 現代を含めて全ての時代に、その時代特有のコスモロジーがある。

堂山3号墳(静岡県磐田市) 静岡県磐田市に堂山古墳群がある。 ここには5世紀に造られた県内最大規模を誇る全長約110mの前方後円墳と、その周辺に、6基の円墳や方墳が築かれていた。 磐田市の天竜川東岸には他にも御厨堂山古墳群があり、太平洋から天竜川…

第1290回 世界の三大リスクと、AI技術

国際情勢のリスク分析を手がける米コンサルタント会社が、今年の世界10大リスクとして、1位にロシア・ウクライナ戦争、2位に中国の習近平国家主席の権力独占をあげているのは、まあ多くの人が共有しそうなことだが、興味深いことに第3位として、人工知…

第1289回 古代のコスモロジーと、現代のコスモロジー

岩上神社(愛知県蒲郡市) 1月21(土)、1月22(日)、13:00- 東京都日野市の私のオフィス(京王線高幡不動駅から徒歩12分)で、「古代のコスモロジー」と題したワークショップセミナーを行います。 この6年間、私は日本国内の古くから人間が大切にしてきた場…

第1288回 時代ごとに変わる人間のコスモロジーと、歴史との向き合い方

今を生きる人にとって、「歴史」が、自分に関係ないもの、もしくは単なる知的好奇心の対象(趣味)、および大河ドラマ鑑賞などの娯楽になってしまったのは、歴史と向き合う時に、人間のコスモロジーのことが、あまり考えられていないからではないかと思う。 …

第1287回 古墳の形と、国譲り神話と、鬼退治の関係。

第1285回のブログで、前方後方墳と前方後円墳の違いを、弥生時代の「方形周溝墓」と「円形周溝墓」の違いの延長と捉えて説明した。一人の王が軍事や祭祀など全権を担う統治システムと、複数人物による分権統治システムの違いではないかという仮説を立てて。 …

第1286回 日本の近代化を促進させたもの

10年以上前、風の旅人編集部で働いていた中山慶が、現在、地域社会活性化と異文化交流を軸にした仕事を、京都の京北地方を拠点に行っている。 日本各地で様々な地域社会活性化の取り組みが行われているが、中山慶が行っているプロジェクトで私が興味深く感じ…

第1285回 前方後円墳と前方後方墳の違いについて

(愛知から信州までの塩の道、三州街道沿いの月瀬の大杉。長野県最大の巨木で、推定樹齢は1500年とも1800年ともいわれる。つまり、古墳出現期から、この街道沿いで世の移り変わりを見てきたことになる。) 新潟の糸魚川からは千国街道、愛知県の岡崎からは三…

第1283回 諏訪と京都の向日山をつなぐ古代のコスモロジー

昨日、諏訪のことについて書いたところ、諏訪のミシャクジ神についてもっと掘り下げて欲しいという意見があった。 諏訪は、昨日も書いたように、特殊な事情によって縄文に遡る祭祀を融合という形で引き継いでいるわけで、諏訪に伝わるミシャクジ神は、縄文に…

第1282回 縄文の記憶が重ねられた諏訪の祭祀

諏訪大社 前宮 御室社。ここに半地下式の土室(つちむろ)が造られ、金刺氏で現人神とされる大祝と、洩矢氏の神長官以下の神官が参篭し、蛇形の御体と称する大小のミシャグジ神とともに「穴巣始」といって、冬ごもりをした。旧暦12月22日に「御室入り」をし…

第1281回 伊勢神宮という聖なる舞台装置

伊勢神宮 宇治橋 伊勢神宮 五十鈴川 先ほどのタイムラインの続きだが、伊勢神宮を訪れると、”つくられた聖域”という気がしてならない。 伊勢神宮は、おそらく、律令制の始まりに、聖なる舞台装置として作られたのではないかと思うのだ。 もちろん、そうだと…

第1280回 10,000年前から引き継がれている精神的イメージ

日本最古の土偶が出土した粥見井尻遺跡。背後に見えるのは烏山。 ここは、中央構造線上にある。 日本の歴史を、改めて考察し、捉え直すことが必要だと思う。 そして、その際には、最新の考古学的成果の上に、もっと地理や地勢のことを踏まえる必要があると思…

第1278回 In all chaos there is a cosmos,in all disorder a secret order.

4年前に私が撮ったピンホール写真。 (最近、井津建郎さんが撮った写真) 井津建郎さんにも許可をいただいて、井津さんが撮った写真と、私が撮ったピンホール写真を並べてアップしました。 ここにアップしている2枚の写真は、奈良の柳生の天石立神社ですが、…