社会

第1223回 ウクライナのことと、政治家の白痴化に対する不安。

ウクライナとロシアの戦争について、歴史文化も国の置かれている状況も異なる日本に安住している自分が、何かの考えを持ったところで、それは浅いものにしかならないという自覚があった。 今もその感覚は変わらないが、昨日、ウクライナのゼレンスキー大統領…

第1217回 「土偶を読む」を絶賛する人たちの心理って?

縄文時代のことが気になっている一人として、「土偶を読む」という本がベストセラーになっていると知って立ち読みしたが、あまりにも独断的で、答えを最初に決めてから、それにそった裏付けだけを集めているという姿勢が目に余ったので、どうでもいいと思っ…

第1216回 危険と背中合わせだった諏訪の御柱祭さえ歪めるコロナパニック。

ショックな出来事。 4月上旬に行われる予定の諏訪の御柱祭。 申年と寅年に行われる奇祭、1200年も続いてきた伝統の祭りが、コロナ禍の影響によって、山出しの曳行(えいこう)や木落としが行われないのだという。 https://www.shinmai.co.jp/news/article/CN…

第1215回 歴史を再認識する必要性

私は、20歳の頃から世界の70カ国以上を訪れ、特に重要な古代遺跡とされるものは、そのほとんどを訪れてきました。子供の頃から、「謎の古代文明」に強く関心があったからです。 古代文明の地を実際に訪れると、人類の歴史は、階段を登るようにステップアッ…

第1210回 出版不況のなか、あえて写真集を作るなら。

このたび制作した大山行男さんの写真集「The Creation 生命の曼荼羅」。 www.kazetabi.jp 発送作業も一段落し、届いた方から、メッセージをいただいています。幸いなことに、今のところ、不満の声は届いていません。 私は、これまで同じ印刷方法で、自分の「…

第1209回 義務教育の教科書や大河ドラマでは伝わらない歴史背景

新しく始まった大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。できるだけ史実に寄り添って、それ以外は自由に、という発想で作られているということなので、ウケ狙いの演出が目にあまるが、史実に寄り添ってという方針に期待して、これまで見てきた。 昨日は、源頼朝の挙兵と…

第1208回 歪んだ人間の死生観と親子愛

92歳という高齢で寝たきりの母が亡くなり、そのことを逆恨みした66歳の息子が、医師をはじめとする在宅医療・介護に関わった人たちを自宅に呼びつけ、44歳の医師を散弾銃で殺害し、41歳の理学療法士に重症を負わせた痛ましすぎる事件。 44歳の医師と41歳の理…

第1207回 富士山という須弥山の周りの生命の曼荼羅世界。

2月20日頃の予定だった「The Creation 生命の曼荼羅」の写真集が、少し予定が早まって、2月1日には完成します。 www.kazetabi.jp 曼荼羅という言葉を耳にしたことがある人は多いと思う。しかし、極彩色の円の中に無数の仏様が存在していて、その造形と色彩が…

第1205回 出版業界の構造変化について

数ヶ月前に、講談社がアマゾンと直接取引を行うことを発表し、業界に驚きが走った。これまでにも講談社発行の本をアマゾンで買うことはできていたので、業界関係者でなければ、さほど驚きとはならないニュースだ。 しかし、これまで講談社をはじめ大手出版社…

第1201回 真っ当な奇人

この記事によると、鬼海さんは29歳の時、「撮る人間と撮られる人間の関係をもう一度考え直したい」と言っていて、50年近くも前にそんなことを真剣に考えていたんだと、今更ながら驚かされる。 写真が自己主張の手軽な手段となり、自己承認欲や虚栄心のために…

第1196回 熱のない時代を生きる自分の寄る辺

作家の梨木香歩さんが、新著のエッセイ集「ここに物語が」を送ってくださった。 www.shinchosha.co.jp ガルシア・マルケスをはじめ、梨木さんのこれまでの読書体験をもとに、どんな本をどんなふうに読んできたかが綴られている。 この本のなかに、15年くらい…

第1195回 光が備える波動の性質と、時を超える写真術。

石牟礼道子さんの才能を発見し、世に送り出し、支え続けた渡辺京二さんが、「逝きし世の面影」という素晴らしい本を残している。明治維新の頃、日本にやってきた外国人が書き残した日本人の生活の美しさや能力の素晴らしさをまとめたものだ。 日本人が無自覚…

第1194回 映画「くじらびと」。11月7日、石川梵監督とトークを行います。

映画「くじらびと」。この奇跡の映画、革命的な映画の大阪での上映で、石川梵監督と、トークを行うことになりました。 大阪復活上映(第七芸術劇場) (11月7日(日)、14:10の回上映後 1時間のスペシャルトークイベント) 登壇者:石川 梵 監督、佐伯 剛(…

第1192回 オリックスの山本投手のトレーニング方法と、いにしえの日本

日本で最も人気スポーツである野球で、最高峰の投手でアメリカ球界も注目しているオリックスの山本投手がこんなことを言っている。 「昔の女の人が米俵を担いでいる写真。担げるの?って思うじゃないですか。コツを知っているから持って運べる。人間にはそれ…

第1190回 写真家の良心と、いのちの在り処。

2018年秋、鬼海さんと小栗康平さんと一緒に亀岡や京都の紅葉を観て歩いた。 昨日、10月19日で、鬼海弘雄さんが亡くなって1年が経つ。 京都の家の玄関には、鬼海さんから頂いたペルソナの写真2枚が飾られており、うちに来る人のなかには、びっくりして、「…

第1187回 「MINAMATA」と「くじらびと」、事実に対する誠実さの違い。

https://lastwhaler.com/bon-ishikawa/?fbclid=IwAR0SB70MpHebmRJByfpHiYdxelCDGQUCUA0cNRw_atUJEzi0os5dT_dc0qk 「これまで海の上の人間の物語を撮ってきた。しかし、海の下のもうひとつの物語があることに気づいた」 石川梵監督の映画「くじらびと」の誕生…

第1186回 たとえフィクションであっても、事実を伝える際のモラルは必要だ。

「Let truth be the prejudice」真実を偏見(こだわり)にしようというユージンスミスの有名な言葉の中のTruth(真実)は、神様の目ではなく、人間の目からの真実である。 ユージン・スミスは言っている。人間というのは、純粋に客観的であることはできない…

第1185回 重層性や複合性の視点を失わずに表現することの大切さ。

映画MINAMATAは、非常にわかりやすいサンプルなので、しつこく言及してきたが、現在の表現の一番の問題は、重層性や複合性の視点が欠けているものが多く、その方が、人に受けやすいということ。だから、単純な構造にしてわかりやすくして人心を誘導する手口…

第1181回 ハリウッドのMINAMATAと、石川梵が一人で作った「くじらびと」の差異。

映画「MINAMATA」を観た人は、ぜひ、石川梵製作の映画「くじらびと」を観て欲しい。 https://lastwhaler.com/ 私が、映画MINAMATAについて、あまりにも無防備に絶賛する人に対して懸念を覚えるのは、映画MINAMATAの手法が、ポピュリズムの常套手段であるから…

第1180回 映画MINAMATAー正義と真理の隔たり

ここ数日、映画MINAMATAについて、あまりにも無防備に絶賛する人が多すぎるので、私なりに感じる問題点を書いてきたけれど、これを最後とする。 この映画は、「事実に基づくフィクションである」という中途半端な逃げで、悪の集団役としてチッソ株式会社は具…

第1179回 映画「MINAMATA」と、当事者意識の問題。

ユージン・スミスを主人公にした「MINAMATA」の映画に対して、熊本県と水俣市の判断は違っていた。この映画の水俣での上映会において熊本県は後援したが、水俣市は後援を拒否した。熊本県の方が水俣市よりも懐が大きいなどと思う人は、水俣のことについて、…

第1177回 「MINAMATA」なのか、「OUR MINAMATA DISEASE」なのか。

映画「MINAMATA」の製作に関わり、主演でもあるジョニーデップが、2020年ベルリン映画祭公式記者会見で、こう述べている。 「ユージンスミスとアイリーンスミスの水俣での記念碑的な仕事と、彼らの献身に! 」 MINAMATAという映画は、まず、このジョニーデッ…

第1176回  水俣とMINAMATAの違い

ジョニー・デップが写真家のユージン・スミスを演じる映画、「MINAMATA」を観てきた。 これは「水俣」の映画とは言えないので、「ユージンスミスと水俣」というタイトルくらいが、ちょうどいい。 ユージンスミスの写真については昨日書いたとおりなのだけれ…

第1171回 『水俣 天地への祈り』 田口ランディ著 を読み終えて 

『水俣 天地への祈り』 田口ランディ著 河出書房新社発行 https://www.amazon.co.jp/%E6%B0%B4%E4%BF%A3-%E5%A4%A9%E5%9C%B0%E3%81%B8%E3%81%AE%E7%A5%88%E3%82%8A-%E7%94%B0%E5%8F%A3%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3/dp/4309029922 久しぶりに、深い…

第1167回 東京オリンピックが浮かび上がらせたもの

女子バスケットボールの試合が始まってすぐ、日本の選手たちと、2mを超える選手のいるアメリカチームとの体格差が大人と子供のように違いすぎていたので、50対100くらいの点差で負けても仕方がないと思ったが、75対90と、そんなに差が開かなかった…

第1159回 ピンホールの眼と、日本の古層

Sacred world 日本の古層」に掲載されている写真は、全てピンホールカメラで映したもの。 一般的な写真撮影は、被写体を探して狙い撃つ性質があり、「撮影する」を英語にすると、shootとなる。カメラのシャッターは拳銃の引き金に等しい。 しかし、私たちは…

第1158回 熱海の土石流と、地球環境問題と、エネルギー問題の関係。

このたびの大雨によって起きた熱海伊豆山の土石流災害。 テレビニュースなどでは、数十年前に行われた盛土が原因であるかのような報道が続く。 もともと、熱海地方は、火山性の硬い黒土に覆われているが、高度経済成長時の人口増に対応するため、山間部の土…

第1156回 大坂なおみ選手の矜持と勇気について

大坂なおみ選手の会見拒否のことが話題になっている。 私は、風の旅人の中でも、色々な人のインタビュー記事を何度も掲載した。 インタビューで話を聞いても、相手の真意をきちんと捉えきれているとは限らないので、原稿にした後、必ず、相手に読んでもらい…

第1153回 これからの紙の本や雑誌作りについて。

昨日、出版業の先行きの厳しさという、かなり以前から言われてきたことについて、私なりの考えを書いたけれど、今日、「日本カメラ」を発行している日本カメラ社が会社清算するということを知った。 その理由として、コロナ禍による広告収入の減少云々と、あ…

第1152回 日本企業の因習と先行き

自社発行ではなく、他社発行の出版物でお手伝いしたのだけれど、出版業の先行きは厳しいなあと痛感。二重にも三重の意味でも。 一般的に出版社って、編集制作サイドと営業サイドが分かれていて、編集制作サイドの企画を営業サイドが確認して、発行すべきかど…