36号で一区切り。これからについて。

 11/4(火)に、風の旅人の第36号(2/1発行)の打ち合わせをする。この号で、ちょうど6年間、発行し続けたことになる。
 年に6回ずつ、6年にわたり発行し続けてきた。出版界の素人の私が、この雑誌をはじめる直接的な転機は、作家の日野啓三さんの死だった。2002年10月14日。それ以前に、日野さんの遺著となった「ユーラシアの風景」を手探りしながら作りあげ、出版の仕事を始めていたが、『風の旅人』という雑誌の理念とか方針を固めて創刊準備に入ったのは、日野さんの死に臨んで、日野さんを通じて学んだことを具体的な形にしようとする衝動が自分のなかに芽ばえたからだと思う。
 思えば、私が、日野さんの家に通っていたのも、ほぼ6年間だった。途中、癌の転移やクモ膜下出血などで入退院を繰り返されていたが、病院へのお見舞いも含めて、ほぼ月に一度ずつくらいお会いし、文明、歴史、宇宙、科学、自然、古代、現代など、様々なことを語り合った。まさにそれらの対話が「風の旅人」の理念を育むことになった。
 6,6,6と、6が三つ並ぶと、映画『オーメン』や、聖書の黙示録のなかに登場する不吉とされる数字になるが、私の解釈では、666というのは不吉ではない。聖書の創世記のなかで、神が世界を創造するのは、第1日から第6日であり、6日で万象が完成したことになる。その作業を終えて休みに入るのが7日目であり、すなわち6という数字は、次なるステージの前の最終段階を象徴している。
 いみじくも、第36号(2009年2月1日発行)のテーマは、「時と転」。
 この号をもって、「風の旅人」を、一区切りにしようと考えている。
 いろいろ理屈を言っているが、二ヶ月に一度というサイクルに追われてきて、ちょっと疲れていることもある。
 昨今の経済事情の悪化で、紙代のコストが大幅にあがり、協賛企業が離れていき、今の状態のままで運営し続けていることが、厳しくなっている。
 物作り以上に消耗するのが、運営だ。物の制作よりも、その物が、社会のなかでどう生きていくかというシステムが大事であり、その基盤を整えることの方が、よほどエネルギーが必要になる。
 人間の身体で言えば、それぞれの器官は、それじたいで存在しているのではなく、身体の様々な部位との関係性のなかで存在している。

 電化製品など生活に直接関係ある物も、表現物のような物も、この社会において、物それじたいは過剰に存在している。
 だから、物それじたいの価値の競い合いよりも、その物を生かすシステムを作りあげることができるかどうかが、これから益々重要になっていくのではないだろうか。
 自分だけ単純に数多く売れて稼げればいいということではなく、互いに生かし生かされる関係の輪を広げていくこと。
 今まで、二ヶ月に一度という短いサイクルで一人で作っていたので、作ることだけで精一杯だった。
 これからは、その期間を4ヶ月に一度か、6ヶ月に一度にして、一冊ずつをしっかりと作り、しっかりと販売し、互いに生かし生かされる関係をしっかりと作りあげていきたいと思う。
 私は、この6年、「風の旅人」という媒体を運営し制作してきたけれど、実際には「旅行」の方がプロだ。これからは、もう少し、「旅行」にも力を入れていきたい。できれば、何らかの形で「風の旅人」と通じるように。

*通常のパッケージツアーではなく、「写真」、「福祉」、「探検、探訪?」、「自然や文明などテーマのある旅」、どんな形でも対応できますが、同じ目的を共有する仲間たちと旅をすることがありましたら、相談に乗らせていただきますので、お問い合せください。

 また、これまで、風の旅人をつくりながら、他に、介護会社のPR雑誌、老人ホームのカタログ、会社案内といったことも手掛けてきました。その種のものは、業界が違っても対応する自信がありますので、御相談いただければ速やかに動きます。コンペでもけっこうです。

→ saeki@eurasia.co.jp

 それとは別に、インディーズミュージックの「犬式」というグループがあるが、「風の旅人」と彼らの音楽と互いに呼応するところがあり、今後、両者のホームページで、それぞれの制作物(CDと風の旅人)を販売していくことにしたので、現在、その準備をしている。
 おそらく、音楽以外にも、そうした形でつながれる物があると思う。互いに紹介し合うだけでなく、互いに販売を補完し合うという形で。なんでもいいのではなく、相通じ合うものがあってこそ、相乗効果が得られる。

 現在の社会は、規格品を大量につくり流通させるシステムを持っている側が圧倒的に強く、規格から外れるものは、いくら質が高くても、運営していくことが簡単ではない。一つ一つが孤立して奮闘するのではなく、何かしらの形でリンクしながら生きのびていく最善の方法を探していきたいと思う。