社会

第1399回 シンギュラリティ(技術的特異点)と、古代のコスモロジー。

昨日と今日は、今年13回目、今年最後のワークショップ セミナー。 ちょうど一昨日、古代のコスモロジー〜日本の古層vol.4〜が納品されたので、ベストなタイミング。 (詳しい内容は、こちらのサイトへ) www.kazetabi.jp 今回の本、これまでの3冊より写真が…

第1398回 この時代における写真家の存在意義

昨日、私が選考委員をつとめさせていただいている笹本恒子賞の受賞式が行われ、久しぶりに、受賞者の高橋宣之さんにお会いしました。 今回の受賞に合わせて、アイデムフォトギャラリー「シリウス」(東京都新宿区新宿1-4-10 アイデム本社ビル2 F)において、…

第1392回 現代人が見失っている「視る能力」について。

中世の人に比べて現代人は、聴覚より視覚に意識が偏っているという話を聞いたことがある。 文化人類学者の川田順造さんが、「曠野から」という本の中で書いているのだけれど、無文字社会のモシ族のフィールドワークにおいて、神話の語り会があるというのでオ…

第1391回 始原のコスモロジー

始原のコスモロジー 日本の古層Vol.4の納品日が決まりました。 12月15日(金)です。 現在、ホームページで、お申し込みの受付を行っています。 出版に合わせて(タイミングが良かっただけですが)、12月16日(土)、12月17日(日)に、東京の事務所で、ワー…

第1390回 人間の傲りを抑制する日本の聖域

真脇遺跡 石川県鳳珠郡能登町 ギリシャのパルテノン神殿やエジプトのピラミッド、シリアのパルミラ、マヤのティカール、エチオピアのラリベラ、アンコールワットやボルブドゥール、タクラマカン砂漠の楼蘭遺跡も含め、世界中に残る遺跡の大半を訪問したけれ…

第1389回 情報とリアリティのあいだ。

何事の おわしますかは 知らねども かたじけなさに 涙こぼるる 西行 神社や古墳や祭祀場が、なぜその場所にあるのかという理由は、現場に立ってみなければ感じ取れません。 そして、その場所に聖域を築いた人たちの心の中を自分ごととして引き寄せないと、そ…

第1387回 人工知能が、積極的に商業的な動機で使われるようになる転機。

人類の将来を左右するかもしれない動きが、世界中の人たちが瞬きしているあいだに行われていたと、後から振り返った時に思うかもしれない。 オープンAIがChatGPTの無料サービスを公開したのは2022年11月30日。まもなく1年になるが、ツイッターで2年、フェイ…

第1386回 AIが、クラウドサービスを通じて企業内情報を学習していくことで起きること。

驚くべき速さで、オープンAIに動きがあった。 昨日の投稿で、CEOを解任されたアルトマン氏と、理事会(企業の取締役会に相当)のあいだに起きた軋轢について書いたが、マイクロソフトが素早く介入し、アルトマン氏と、オープンAIの社員を丸ごと吸収する動き…

第1385回 オープンAIに起きている騒動は、人工知能の未来を左右するかもしれない。

人工知能の最先端の領域が激しく揺れている。 現在のこの動きは、人間が人工知能を正しく管理できるのか、それとも人間は、人工知能を自分の欲と利益のために使おうとする競争のために管理できなくなり、けっきょく人工知能の僕になってしまうかの分岐点なの…

第1384回 イスラエルのイデオロギーと、日本古来の境界意識の違い。

間垣の里(石川県輪島市) イスラエルに限らないが、唯一絶対神の世界は、善悪二元論でもあるので、敵と味方の線引きを明確にしたがる。だから、その境界に、高い壁を築く。ガザを取り囲む壁は、ベルリンの壁よりも高く、その壁は、見方を変えれば、奢り昂っ…

第1383回 イスラエルは、なぜアブラハムのことを自分ごとにできないのか。

ガザとイスラエルの問題は、私なんかが何か意見を言えるようなことではないけれど、ハマスの無差別殺人から始まったこととはいえ、最先端の兵器を大量に備えるイスラエルの、市民や子供の区別なく徹底的に破壊し殺戮し続ける暴挙は、正気の沙汰とは思えない…

第1379回 この時代の”編集”の仕事について

1年に一度、京都に来て学んでいるスタンフォード大学の学生に対して「編集」に関する講義をしていて、一昨日にそれを行った。途中、コロナ禍があったので記憶が曖昧だが、6、7年前に始めたかと思う。 毎年違う生徒なので同じ内容のものでも構わないのだが…

第1375回 未来のコスモロジーと、始原のコスモロジーが重なっていく。

古代に関する本を作ったり、ワークショップセミナーを行っているのは、「歴史好き」のための情報提供を意図しているわけではなく、念頭には、常に「未来」のことがある。 「未来」のことを見据えるうえで「古代」を見据える必要があると感じている。だからと…

第1373回 「写す行為」と「写る現実」のあいだ。

六本木のフジフィルム に、広川泰士さんの写真展を見に行き、その後の、関係者三名のトークも聞いた。 広川さんの静かな眼差しによって写し撮られた洪水による破壊の凄まじさと、それに対抗するための巨大な堤防は、まさに聖書の中の、ノアの洪水の後のバベ…

第1372回 生成AIと人類の未来について

ソフトバンクグループの孫正義会長は、ディベート相手として毎日 GPT-4版のChat GPTと議論を重ね、そこで生まれたアイデアを特許として申請し、集中した日は1日30件、今月中には1000件を突破するのだという。Chat GPT内での議論は、会社の役員とのディベート…

第1370回 馴れについて。

”馴れ”というのは、人間の可能性につながることかもしれないし、逆に、人間を損なう原因になるかもしれない。 今年に入って今回で10回目、6時間ほどのワークショップセミナーを、毎回二日続けていて、第3回目くらいまでは、けっこう疲れて喉も痛くなり、終…

第1368回 世界観や人生観に影響を与える歴史観

ここ数日で、「日置」と「額田部」を軸にした長大な文章を書いた。 なぜ、今、あえてこんなことを書いているのかというと、私たちの足下の歴史の捉え方が大きく歪められてしまっていれば、現在を生きる私たちの世界観や人生観も歪んでしまって当然だと思うか…

第1364回 時間が無い時代から時間に追われる時代への転換。

現代社会は、「神話なんか生きていくうえで役に立たない」と思っている人が大半だが、白川静さんが、岩波新書の『漢字』の中で、人間と神話の関係において実に深い内容のことを、簡潔に書いている。 「神話の時代には、神話が現実の根拠であり、現実の秩序を…

第1363回 始源のコスモロジー

日本は、海に囲まれた島国であり、大陸から近くもなく遠くもない絶妙な距離感が、日本という国の個性を作り上げてきました。 また、海に囲まれていながら国土の70%が山岳地帯であり、それらの山々を源泉とする河川が、日本を網の目状につないでおり、この…

第1362回 同調圧力が強すぎるのか、周りに流されやすい人が多すぎるのか。

ユーチューブで、「陰謀論」や「捏造」をテーマにすると、閲覧者が増えるらしく、そういう情報に染まってしまうと頑迷にそれを信じ込んでしまい、他の人の意見に耳を傾けなくなるという話を聞いた。 いつの時代でも、「人に流されやすい人」はいる。 ネット…

第1360回 スサノオの活躍と狼藉について。二律背反的な状況を乗り越えるために(1)

八雲山の須佐男の磐座=須賀神社の奥宮(島根県雲南市) 神話の中のスサノオは、人間に恩恵を与える神であると同時に、野蛮な振る舞いで周りに迷惑をかける神として描かれているが、これは、たとえば技術の発展が善と悪、禍と福という両極な状況を作り出す二…

第1359回 鳥のさえずりを「X」にすることの陰に。

ツイッターは、私自身はほとんど使っていないが、鳥のさえずりマークがxマークになって、なんだか不気味な感じがする。 ツイッターは、多くの人々に使われているわりにビジネスとしてはうまくいっていなかったのに、イーロンマスクが、なぜあれほどの大金を…

第1357 回 神武天皇とは何か(4)

神話上、ニニギは、天孫降臨つまり外部からやってきた存在だが、神武天皇は、そうではない。 神武天皇の母親は、豊玉彦の娘の玉依姫であり、祖母は、豊玉彦の娘の豊玉姫、曾祖母は、コノハナサクヤヒメと、女系を通じて海人が三代に渡って続いているし、神武…

第1355回 わたしの叔父さん

いろいろな表現活動のなかで、心から人に推薦したくなるものは、とても少なくなった昨今なのだけれど、「わたしの叔父さん」というデンマーク映画が、とてもよかった。 www.magichour.co.jp 鬼海弘雄さんが生きていたら、真っ先に伝えたい映画。 昔は、当た…

第1342回 始原のコスモロジー

なぜ歴史を探究し、歴史を学ぶのか? 私は、20歳の時に海外放浪に出て、地中海世界やオリエント世界を旅している時から、「人間への信頼を取り戻すため」と思っていた。そして、それは同時に、「現代世界の問題の本質はどこにあるのか?」を考えることだった…

第1340回 ピンホールカメラで世界と向き合う時に見えてくる古くて新しいコスモロジー。

夏至を境に、今日から1日ずつ日が短くなっていく。 私は、ピンホールカメラで写真を撮っているので、日没時間はとても気になる。 日が短くなると、取材中もゆっくりと昼食をとっていられない。だから、夏至になると、少し切ないものを感じ、冬至になると、翌…

第1339回 文字と人間の精神文化の関係

人間の精神活動は、少しずつ時間をかけて右肩上がりで成長変化を遂げてきたわけではない。 人間は、文字を使っていない時と、文字を使うようになってからでは、精神活動に大きな変化が起きる。そして、文字を使い始めた人間の精神活動には、地域差に関係なく…

第1337回  見えないものをみるために

「見えないものを見るためにカミオカンデを作った。」 これは、自らが設計を指導・監督したカミオカンデによって史上初めて太陽系外で発生したニュートリノの観測に成功し、ノーベル物理学賞を受賞した小柴 昌俊さんの言葉。 スーパーカミオカンデは、カミオ…

第1328回 出雲の国譲りとは何なのか?

出雲大社の隣に、摂社の命主社(いのちのぬしのやしろ)がある。巨岩の前に建てられており、古代の磐座が聖域だったと考えられる。社の前には、推定樹齢1000年といわれるムク(椋)の巨木がある。1665年、命主社の裏の大石を石材として切り出したところ、下…

第1324回 石垣づくりの奥義と、未来の可能性。

岐阜県中津川の苗木城あたりは、日本三大ペグマタイトの地、つまり宝石の産地。 ペグマタイトは、主に花崗岩地帯に生じるが、中津川は、花崗岩の奇岩がゴロゴロしている。 巨石とか大樹は、古くから信仰の対象だが、神籬(ひもろぎ)など神を迎えるための依…